Jiro FUJIMORI
フランスパンを日本に伝えた「Jiro FUJIMORIの店」

Histoire de la Tarte Tatin タルト・タタンの話

 

 


tarte tatin par BIGOT TOKYO

 

 

甘酸っぱく煮詰められたリンゴを惜しみなく敷いて、アクセントにはシャンティやグラス・バニーユ、またサワークリームなんかと組み合わせても、最高に美味しい。

 

タルト・タタンはいまではリンゴをつかったお菓子の代名詞ともいえる存在。
世界中にそのファンがたくさんいます。

そもそもこのタルト・タタンは、作り手ができたてのリンゴのタルトを間違えてひっくり返してしまったという失敗が「偶然」生みだしたお菓子として言い伝えられてきていますが、その真相は未だに謎。

けれども確かにタルトタタンは、ソローニュ地方、ラモット・ブヴロン村でホテルタタンを営むタタン姉妹による「うっかり」から生まれました。

 

 


 

 

ソローニュ地方はロワール川とシェール側に挟まれた、豊かな森林地帯。 その深い森の中には小さな湖がいくつもあって、古くから狩猟が盛んな地域としても知られていました。

このフランス中央部は豊かな平野を川が潤し、野菜、果物、花、穀物の栽培が盛んで、「フランスの庭」、「フランスの穀倉」、また「真のフランス」とも言われています。

そんなソローニュ地方、ラモット・ブヴロン駅の目の前にあるホテルタタンには、いつも猟師や舌の肥えた美食家たちが訪れ、週末ともなるとホテルタタンは大繁盛していました。


 


 

いまでも「ホテルタタン」は同じ場所で営業を続けています



タルトタタンが生まれたきっかけを「忘れられてできたお菓子」と語るのは、現ホテルタタンオーナーのカイエさん。

 

当時、ホテル内にあるレストランが大変混雑してきたとき、デザートのりんごのタルトをつくっていないことに、ステファニー・タタンが気が付きました。
ステファニーはあわててりんごをお鍋に入れて煮詰め、型に敷き詰めましたが、肝心のタルト生地を敷くのを忘れていたのです。

そこでステファニーの姉、カロリーヌが知恵を絞ってこう言いました。

 

「それなら、リンゴの上から生地を被せてみたら?」

 

ピンときたステファニーは、言われたとおりに生地でリンゴを覆い、火を通しました。

そして、出来上がりを裏返しお皿に盛ってみたところ、リンゴは美しいアメ色となり、その場のお客さんたちから大絶賛されたというのです。


 

姉妹が当時使用していた窯を いまでも見ることができます

 

 

のちにこのタルトはホテル・タタンの看板菓子となり、ソローニュ地方一帯に広まりました。そして美食家で有名なキュルノンスキーがこれを食べて感銘を受け、1926年にはパリで『タルト・デ・ドゥモワゼル・タタンtarte des demoiselles Tatin(タタン姉妹のタルト)』と紹介し、世界的に一躍有名になったのです。


 


フランスに伝わる伝統菓子(古典菓子)の多くは、その歴史背景や風土によって生み出されたものばかりですが、このタルトタタンはタタン姉妹のおてんばな性格と、とっさのアイディアによって生まれたユーモアあふれる可愛いお菓子。

そんな楽しいヒストリーもまた、タタンの魅力のその一つと言っても良いかもしれません。



 

 

 

 

 

 

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